連載シリーズ「糖尿病の正しい知識を持ちましょう」

 第13回「糖尿病の検査項目シリーズ④ クレアチニン」

クレアチニンとは何やら聞きなれない名前です。しかし、この検査は腎臓の機能を調べるための最も重要な項目です。糖尿病で通院している方は最低でも年に1回はクレアチニンの値を検査してもらっておられる筈です。今回はクレアチニンを取り上げます。

腎臓のもっとも大切な働きは尿を作って捨てることです

腎臓は24時間、休みなく尿を作っていますが、尿の中身は何でしょうか。先ず水分です。そしてその水分の中に体から出てきた老廃物や余分な塩分が溶けています。つまり尿とは体外に捨てなければならない様々なものを溶かしている液体といえます。人間は60兆個の細胞で成り立っています。すべての細胞は生きていますが、絶えず古い細胞は死滅し、新しい細胞に置き換わります。すなわち、新陳代謝しています。そのため、毎日必ず体中から不要な老廃物が出てきます。簡単にいえばゴミですから、捨てなければなりません。また、人間は毎日塩分を摂っています。生きていく上で必要な塩分は1日3g程度ですが、大多数の人はそれ以上摂っています。体内の塩分が過剰になると血圧が上がり、むくみも起こり、心臓に負担をかけて最終的には心不全に至ります。そのため、余分な塩分も捨てなければなりません。

尿を作る仕組みは2段階あります

図は腎臓で尿が作られる仕組みを簡単に示したものです。大まかに言えば、腎臓は2つの部分で成り立っています。最初は血液を濾過するフィルターの部分で、糸球体(しきゅうたい)と呼んでいます。左右の腎臓にはそれぞれ100万個程度の糸球体があります。すべての糸球体に流れこむ血液量を合計すると、1日で1200~1600リットルにも上ります。糸球体に流れてきた血液はフィルターのような仕組みで濾過されます。濾過が終わった血液は糸球体から再び出ていきます。一方、濾過された液体は原尿(げんにょう)と呼びます。原尿は1日で150リットル程度にもなります。原尿の中には余分な水分や塩分、老廃物も溶けていますが、ブドウ糖や蛋白質など体にとって捨ててはいけないものも含まれています。血液中に溶けていたブドウ糖や一部の蛋白質はサイズが小さいためにフィルターの網の目を通過してしまうからです。

原尿は次の部分で、これは尿として捨てる、これは捨てずに血液に戻すといった、内容物の取捨選択が行われます。この場所を尿細管(にょうさいかん)と呼んでいます。それぞれの糸球体の先は尿細管につながっています。原尿中の塩分や老廃物は捨てる、ブドウ糖や蛋白質は血液に戻すといった選別が行われます。尿細管で捨てないと選別されたものは再び血液中に戻されます。また、水分も捨て過ぎると体内の水分が減少してしまいますから、余分に捨て過ぎないように尿細管で吸収されて血液に戻されます。尿細管での取捨選別を経て、捨てると決められたものが、最終的に尿として体外に排泄されます。1日で1~2リットル程度です。

図1.腎臓の模式図

糖尿病では腎臓が傷んできます

糖尿病の合併症の一つに「糖尿病腎症(じんしょう)」があります。糖尿病による腎臓機能の低下です。糖尿病腎症ではフィルター部分の糸球体も、原尿を取捨選択する尿細管も共に傷んでしまいますが、最も障害を受ける部位は糸球体です。図は腎症の初期段階です。血糖が高い状態が持続すると、最初に糸球体のフィルター部分の網の目が異常に大きくなってしまいます。そのため、本来は濾過されにくい大粒の蛋白質がフィルターを通過してしまいます。それでも、尿細管である程度は取り戻されて血液中に戻ります。しかし、尿細管の能力以上に蛋白質がフィルターから大量に濾過されてしまうと、尿細管ですべてを取り戻すことは出来ません。取り戻せなかった蛋白質は最終的に尿として体外に排泄されてしまいます。これが尿蛋白陽性の状態です。健康な人では尿蛋白は陰性です。しかし、糖尿病腎症では尿蛋白が陽性になります。ですから、この時期は尿蛋白の検査が大切になります。ところで、老廃物は蛋白質に比べてはるかに小粒です。従って、フィルターのサイズが正常の時から常に大半が濾過されています。そのため、糖尿病腎症の初期段階になっても大きな変化はありません。

図2.初期の糖尿病症腎症

糖尿病腎症が後期の段階になると、図のように糸球体の障害が進行し、濾過自体があまり出来なくなってしまいます。すなわち血液が糸球体を素通りすることになってしまいます。片側の腎臓に糸球体は約100万個、両側合わせると200万個ありました。傷んだ糸球体の数が増えるほど、老廃物が濾過出来ずに血液中に貯まってきます。血液中の老廃物が異常に増加すると、体内の様々な機能が障害されます。これを「尿毒症」と呼びます。尿が毒になるという意味ですが、実際は尿に捨てるべき老廃物が血液中に増え過ぎて害をなすというわけです。そのため糖尿病腎症が最終段階に至ると、血液を人工的に濾過して老廃物を除去する必要があります。これが血液透析です。最近は自分の腹膜をフィルター代わりに使用する腹膜透析という方法もあります。いずれにせよ老廃物は生きている限り毎日出てきますから、人工的な方法でこれを濾過する必要があるわけです。

図3.後期の糖尿病症腎症

血液中の老廃物をチェック出来ます

腎臓が老廃物をきちんと濾過し、尿として排泄出来ているかを血液検査で調べることが出来ます。それがクレアチニンの検査です。体から出てくる老廃物は何種類もありますが、すべてを血液検査で調べることは出来ません。そこで代表となる物質を測定します。それがクレアチニンです。クレアチニンは老廃物の一種で、主に筋肉から血液中に排出され、腎臓で濾過されて尿中に捨てられています。血液中のクレアチニン値の正常範囲は年齢や性別、体格によっても異なりますが、ごく大まかには1.0 mg/dl未満です。そして、クレアチニンの値を分数にしたものが、その人の腎臓機能の目安と言われています。例えば、クレアチニンが2.0 mg/dl(血液100 ml中に2 mg含まれるという意味で、1 mgは千分の1gです)であれば、その人の腎臓機能は健康人の1/2、5.0 mg/dlなら、1/5といった具合です。クレアチニンが7.0 mg/dl前後まで上昇すると、健康人の1/7の腎臓機能ですから、倦怠感や疲労感をはじめ様々な尿毒症の症状が出てきます。透析治療が検討される段階です。

おわりに

クレアチニンは腎臓の機能を調べる上でとても重要な検査項目です。糖尿病外来では血糖やHbA1cと共に必ず検査されています。ご自分のクレアチニンの値が1.0 mg/dlを超えている場合は、どのような点に注意すればよいか、主治医の先生や管理栄養士の先生とよくご相談下さることが大切です。